A1.
2歳以下の赤ちゃんでは頭やカオに赤くジクジクした皮疹が出てなかなか治りにくい場合が多く、2〜12歳のお子さんでは、皮疹は全体的にかさかさ乾燥して時々皮疹がときどきもりあがって茶色のシミのような色素沈着がみられます。思春期や大人では再び上半身とくにカオや首、むね、肩、肘などにかゆみの強い赤い皮疹ができて、多くは心理社会的なストレスや生活リズム、寝不足やカゼ症状などの体調の変化によって悪くなります。
このような皮膚の状態が赤ちゃんでは2カ月以上、子供や大人では6カ月以上続く場合血液検査などの結果などをふくめてアトピー性皮膚炎と診断されます。
アトピー性皮膚炎の方は生まれつきセラミドなど保湿因子が少なく、皮膚を守る1番皮膚の表面にある角質というバリアのしくみが弱く、外からのアレルゲン(ダニやホコリ、カビや花粉など)も簡単に入りやすくなります。また本来皮膚がもっている水分がどんどん皮膚から蒸発して少なくなってしまいカサカサしてしまうため、治療によって症状が良くなってからも保湿剤を塗ったり乾燥を防ぐ生活を続けたりすることが何よりも大切です。
当院では、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに沿いながら、皮膚科専門医としての知識や経験を患者さまにお伝えしながら細かい生活指導もふくめて診療させていただきます。
また、不足するセラミドを補うためのセラミドクリーム(自費)も扱っております。
A2.
ステロイドとは副腎から分泌されている副腎皮質ホルモンで免疫を抑えることで皮膚の炎症を鎮めます。副作用として長い間塗るとニキビや感染症が起こりやすくなったりうぶ毛が増えたりすることがあります。ステロイドの飲み薬をたくさん、長い間飲んだ場合は糖尿病になりやすくなる、血圧が上がりやすくなる、顔が丸くなる(ムーンフェイス)、骨粗鬆症になりやすくなる、などの副作用がありますが、皮膚科医の診断のもとで使う分にはこれらの症状が出ることはありません。ただ、ステロイド外用をムダに長期間続けると、皮膚の免疫力は徐々に低くなってバリアが弱くなり、ささいな刺激でカユミや炎症が繰り返しやすくなるので、徐々に処方する保湿剤に切り替えていくのが望ましいと思います。
薬の塗り方ですが、あまり擦り込んで塗らずに炎症部位にそっとのせるように塗り、塗ったあとにティッシュペーパーが肌にくっつくぐらいの量がよいでしょう。
A3.
よくステロイドが怖いからといって非ステロイドの薬を赤ちゃんの顔などに処方される場合がありますが、非ステロイド系の塗り薬はかぶれる頻度が多くその割には効果が少ないので皮膚科ではあまり使いません。使っていらっしゃる方でも、塗っても塗ってもあまり症状が変わらなかったり余計赤くなったりする方は中止して様子を見てください。
A4.
蕁麻疹というと食べ物、というイメージされますが、食べ物によることは5%と少なく、70%くらいは原因不明といわれています。おそらくその他、薬や接触(こする)、寒さなどの直接的な刺激だけでなく、感染症やストレス、疲れ寝不足などの体内の環境変化が刺激となってある一定の閾値を超えると、肥満細胞からヒスタミンなどのサイトカインが出ることによって夕方から夜にかけて出やすくなります。
なかなか治りずらい場合は、明らかなきっかけがなくても、自分自身の血液中のIgEグロブリンやレセプター(グロブリンがくっつくところ)に対する自己抗体(自分の細胞を攻撃してしまうこと)を持つことによる"自己免疫性じんましん"の場合があります。このような自己免疫性じんましんでも、自律神経やホルモンなどの日内変動する体の中の因子や様々な悪化因子が関係していくつかの要因が合わさったときに症状が出るようです。
治療としては多くの蕁麻疹は、抗ヒスタミン剤を中心とした飲み薬やがて治っていきます。なかなか治りにくい場合は抗生剤や胃薬を併用してみたり、まれにステロイドや免疫抑制剤などを副作用の出ない範囲の量で治療に使うこともあります。ただ、症状が出なくなったといってすぐ飲み薬を中止するとほとんど蕁麻疹が再発してしまうため、回数を少しずつ減らしていったり、錠剤の数を減らしていったり、と焦らずにゆっくりと減らしていくことが大切です。
A5.
主に冬を中心として、頬や口の周りに赤み(顔の毛細血管が拡がったもの)や、ニキビのような赤いブツブツや膿庖を生じることがあります。ストレス、アルコール、紫外線、コーヒーや香辛料などの刺激物や急激な温度変化により悪化しますが、中でも診察していると30〜40代の女性を中心に、家庭や職場でのストレスによって悪化していることが多い印象です。ニキビの治療に準じて抗生物質を飲むことにより軽快します。
A6.
"毛孔性苔癬"(もうこうせいたいせん)といい、生まれつきの素因が大きいため、完全に治りずらい事も多いのですが、こすって洗ったり、気になってよく触ったり、目の粗い服でこすれてしまったりすることを避けて、角質を薄くする塗り薬などで治療します。あまり効果がみられない場合は保険外の治療になりますが、グリコール酸クリームによるピーリングが効果的です。
(3週毎に3〜4回繰り返すと効果的です)
A7.
足のゆびの間や足の裏に水庖ができたり皮が剥けてきたりしたらまず皮膚科へ受診ください。よく市販のクリームタイプやスプレータイプ、液体タイプの薬を使ってかぶれる方や、2次感染を起こして足全体が腫れてしまう方などもいます。基本には顕微鏡で水虫が確認できたら、処方するクリームタイプの塗り薬を指の間、足の裏に入浴後塗るだけで改善します。このときの注意点は症状のない指の間にも塗ること、そして良くなった後もすぐやめてしまわずに2〜3カ月は塗り続けることが重要です。最近はCMなどの影響で爪水虫についても良く知られ、受診される方が多くなっています。基本的には厚く白くなった爪を顕微鏡で検査して水虫を確認した後、飲み薬を3カ月もしくは6カ月飲むことによって
ほとんどの方が治ります。ご高齢の方の爪の水虫も、あきらめずに飲み薬もしくは塗り薬で治療すればきれいになります。あきらめずにぜひ受診してください。
A8.
毛の根元にある、毛を作る細胞は本来自分"わたし"の細胞なのですが、それを誰か違う"他人"の細胞だと勘違いしてしまうことによるといわれています。本来自分にはないはずの"異物"だと認識された細胞は<免疫>の力により"わたし"の中のリンパ球・白血球により攻撃され、弱くなり病的な毛へと変化します。攻撃が強いときにみられるいくつかの"病的毛"は皮膚科医が診察すればすぐわかります。もし、あれ?と思われたら早めに皮膚科へ受診してください。
病的毛が脱毛斑にみられたり、その部位がチクチク痛かったり痒かったり突っ張ったりする場合は、攻撃される炎症が強い証拠ですから、塗り薬をきちんと塗る必要があります。また、治療中でもシャンプーや毛染め、普通のパーマなどは悪化原因にはならないので通常の生活を続け、バランスのよい食事と規則正しい生活が大切です。
炎症が治まってくるとまず透明で細いウブ毛が生えてきて、徐々に伸びるに従って黒くてしっかりした毛が再生してきます。
1-2個の単発型はすぐ再生してきますが、数がたくさんできたりまゆ毛や体の毛も抜けてしまう場合は時間をかけていくつかの方法を組み合わせて治療します。
A9.
遺伝子因子を持つ思春期以降の男性に発症し、男性ホルモンのレセプター(ホルモンがくっつくところ)遺伝子が原因で発症するといわれていますが、それでなく多くの因子が関与しているようです。男性型脱毛症の方の毛包では、男性ホルモンによって出るサイトカインが毛包細胞の増殖を抑えて、髪の毛が伸びる"成長期"の時間を短くすることが分かっています。この成長期の時間の長さが髪の毛の長さを決めるため、成長期が短くなることによって毛の長さもどんどん短くなり、ついには皮膚に出なくなってしまい、髪が少なくなっていくのです。
プロペシアは、この髪の毛に関わる型の男性ホルモンの活性化を抑えることにより、短くなってしまっている成長期の長さをもとに戻し、皮膚に見えなくなるくらい短くなってしまっている毛の長さをもとに戻していく働きをします。プロペシアは髪の毛に関わるホルモンだけに作用するので、飲むことによって特に性機能を低下させることはありません。
プロペシアは即効性はありませんが、早い方で2-3カ月で効果が出始め、1年間以上内服した方の有効率は(やや有効+中等度有効+とても有効)で80%、(中等度有効+とても有効)で40-50%です。日本皮膚科学会の男性型脱毛症ガイドラインではプロペシアの内服とりアップX5(ミノキシジル5%)の組み合わせが勧められています。